新電力 マンション

新電力 マンション

一括受電は、大量に電気を使う事業所用として割安な高圧電力を利用し、マンションの電気料金を抑える仕組みだ。

 

 宝塚エリーでは各戸が負担する電気料金はそれまで契約していた関西電力と同等とし、差益を将来の大規模修繕などに向けて積み立てている。切り替えで生じる収入は年間300万円。管理組合の鈴木哲人理事長は「無理なく積み立てができるようになってよかった」と話す。

 

 2012年に一括受電への切り替えを決めた東京都目黒区の「ライオンズマンション祐天寺」は、差益の一部を各戸に還元する。管理組合理事会によると、「電気代は10%程度安くなった」(河合克巳監事)という。

 

 一括受電は05年ごろから広がった。調査会社の富士経済によると、同契約を結ぶマンションは15年で58万800戸の見込み。10年からの5年間で5倍以上に急増している。

 

 だが、電力自由化で各家庭が契約をする電力会社を選ぶことが可能になり、一括受電への切り替えが難しくなる事例が今後、増えていきそうだ。

 

 関東地方にある中規模マンションは昨年、管理組合の総会で一括受電への切り替えを賛成多数で承認した。だが、反対した数戸は「電力会社は自分で選ぶ」として同意書の提出を拒んでいる。近畿地方では反対者に対して損害賠償を求める提訴を検討しているマンションもある。

 

 一括受電は安さを全面的に打ち出すことで普及してきたが、電力自由化で電力会社を選択する基準が広がった。環境保護に関心が強い人は太陽光など再生可能エネルギーの使用率などを基準に選べ、高齢者の安否確認などの付帯サービスに魅力を感じる人もいる。

 

 契約切り替えをサポートしている不動産コンサルティング会社エクセルイブ(神戸市)の尾浦英香社長は「選択基準が価格だけではなくなった結果、合意形成はこれまで以上に難しくなる」と話す。

 

 一括受電では最大手の中央電力(東京都港区)の北川竜太取締役は「新電力会社も値引きに力を入れているが、それでも一括受電の方に優位性がある。価格差を丁寧に説明して合意を得られるように努力していきたい」と話す。

 

 マンションの合意形成を巡っては区分所有法の規定があり、建て替えの場合でも全体の5分の4以上の同意があれば実現できる。だが、一括受電の契約変更では、変更前の電力会社が電気事業法での供給義務などを理由に、全住戸分の同意書の提出を必ず要求する。

 

 居住者間のトラブルに詳しい「マンション管理見直し本舗」代表の村上智史さんは「管理組合の総会で適法に決議したことの意味は重いはず。ごく一部の反対者のためにマンション全体がメリットを享受できなくなるのは理不尽だ。組合の機関決定に基づいた契約変更は確実に認められるよう、国は法整備をすべきではないか」と話す。

 

 一方、市民団体「マンションコミュニティ研究会」代表の広田信子さんは多数決には慎重だ。一括受電は契約期間が長く、料金の見直しも難しい。「マンション内の人間関係は長く続き、強引な合意形成をしようとしたらうまくいかない。時間をかけて同意を得るべきだ」(重政紀元)

 

 ◆キーワード

 

 <一括受電サービス> 戸建てなどの一般住宅に送られている電気は「低圧」。これに対しマンションでは、「高圧」で送られる電気を、電力会社が建物内に設置した変電設備で低圧にして各戸に供給するケースが多い。価格は低圧より高圧のほうが2〜3割安いとされ、マンション側が高圧電力を契約して自前で低圧に変換すれば、その差益を得られることになる。電力会社との契約は、管理組合が直接する場合と、代行の専門会社が行う場合がある。